寝床で『言論は日本を動かす』第10巻「風俗を変革する」に野原一夫「花森安治」が含まれていて、それを読んだついでに常磐新平「植草甚一」を読み返してみたが、これは変な文章だった。つまり、前半、ほぼ植草甚一批判、というべき内容になっている。いくつかの私怨が重なり、また植草がちゃんと本を読まずに紹介し、しばしば誤ったことも書いていたことをあげつらっている。「信用しなくなった」「何が散歩と雑学だ、と軽蔑したこともあった。このインチキめ! 老人なら老人らしくしろ!」などという文章もある。本をちゃんと読まずに紹介する、あるいはジャズについての文章が、ネタ本の翻訳に近かったというような指摘は当っている部分、あるかもしれない。しかし、この本は、くわしく知らない人に、その人物の生涯と功績を、コンパクトに紹介するために作られたもので、常盤の書きっぷりはちょっとフェアじゃないなと思えた(そんなにイヤなら依頼を断る手もある)。後半、あわてて評価する文章にシフトするが、ときすでに遅し。濁った印象は消えないのだ。
岡崎武志 氏のブログより
https://okatake.hatenadiary.org/entry/20160726