椎根 和(著)オーラな人々
河出書房新社 (2009/2/10)
植草甚一 93-106頁
97頁
石井書店は、道玄坂を上がって、最初の横丁を右にまがり、 麗郷という台湾料理の反対側の路地を入ったところに、闇市あとの空地とも道路ともつかない妙にほのぼのとした空間にあった。つぶれそうなバラックの店舗が、三軒ほど並んで、その中央に書店があったような気がする。両側はなぜか米軍払下げの中古衣料品店で、目玉商品としてリーバイスの中古ジーンズなどをぶら下げていた。東、南、西側にはビルの殺風景な背中があった。こんな所にやってくる外国人の姿は、あんまり見かけなかったが、石井書店の店先には、パルプマガジン、アメリカン・コミックスの古本が乱雑に積まれていた。
文頭に一九六八年の夏、渋谷・道玄坂の下の大きな布地屋の前で、植草甚一サンと何度か会い、
とあるので、1968年ころの話だとおもう。
自分が石井書店に通い始めたのは1969年から1970年ごろだと思うので、自分が知る石井書店の風景とは異なっている。